夫婦で海を挟んでの別居を解消するまでの長い話(その1)

この記事では、我が家が直面した、夫がアメリカに単身赴任後、妻の子連れアメリカ赴任がきまり、長きにわたって海を挟んで別居することになったエピソードについて書いています。

私は、日本で結婚・就職し、子どもをもうけ、その後色々あって仕事を辞めてアメリカに渡りました。そして数年間アメリカで働いて再び日本に戻ってきました。大枠では比較的よくあるパターンだとは思いますが、共働き夫婦でそれぞれ海外転勤して別居して、片方が会社を辞めて現地就職して、アメリカで子どもが生まれて、と言うと、あんまり似た事例はないんじゃないかなと思います。プライベートな部分を少しぼかしながら、詳細にご紹介します。(全部で11回にわたる長い話です)

スポンサーリンク

グローバル規模で仕事を辞めた男性モデルケースの話

堀込泰三(ほりこみたいぞう)さんという方がいます。

東大を卒業されて大手企業に入社し、結婚。奥さまの出産をきっかけに、自身が2年間の育休を取得された方です。育休を取得したのは、男性が長期育休を取るのが比較的レアケースだった2007年のことです。

1年ほど育休をとって育児をしていたら、奥さまが2年間の海外転勤を命じられました。そこで、育休期間中に一家で海外に移住。育休期間満了に伴い、堀込さんは復職(日本)するも、奥さまは引き続き海外勤務(with子ども)です。会社の制度(配偶者海外勤務休暇)を行使しようとするも、許可が降りず、子どもと離れて暮らす生活に耐えきれず、大手企業を退職されました。

そして家族の元に戻り、奥様の海外勤務1年弱を再び家族で過ごさされ、現在は翻訳家として活躍されているんです。

男性が妻子を残して海外で単身赴任というケースはこれまでたくさんあったでしょう。妻子同伴で海外勤務してきた人もたくさん見かけました。女性で海外駐在する人も昔に比べて増えていると思います。

女性の社会進出、日本人の海外進出がどんどん増えている社会において、仕事より家庭を優先する選択をした男性のモデルケースと私は考えています。

そんなわけで、子どもを連れて海外赴任する、堀込さんの奥様のような女性も増えてくるのでしょう。

彼のエピソードは著書に詳しく書かれています。


…これと同じ、もしくはそれより大変なことが我が家にも起こったのです。

全ての始まりは、私の短期海外赴任から

私は、大企業勤めの会社員でした。新卒から6年ほど勤めたある日、幸運にも会社の「海外研修員制度」なるものに選ばれ、2013年の4月から1年間、アメリカに行っていました。100人以上いる職場で、数年に1人しか選ばれない制度です。

当時2歳半の息子と別れるのは本当に辛かったけれど、その後の人生における「アメリカ帰り」という意義の重さを考え、妻子を置いて単身でアメリカに行きました。

なお、妻子同伴というオプションもありました。ただ、妻としては1年間仕事を休職しなくてはならず、色々考えた末、1年間だけなら…ということで、息子と2人で日本にとどまることになりました。妻は海外志向が強かったので、私が先に海外に行くことになり、少し悔しかったようです。

もともと家事育児よりも仕事の方が好きだった妻は、私が渡米して2ヶ月、妻はシングルマザー状態でしんどい暮らしをしていました。

…我が家にとっては大きな出来事ですが、ここまでは、まだ良く聞く話です。

妻も海外赴任が決まる。任期はなんと4年

ある日、妻は会社の人事に突然面談を設定されました。上司同伴の面談です。面談の前日、私は妻とSkypeで会話しました。妻は一体何を伝えられるのか見当もつかなかったようで、緊張していました。

「4年間、アメリカ支社へ出向してもらう。開始は3ヶ月後から」

妻が面談で伝えられた結果です。

子どものこと、家族の事など、様々な懸案事項はさておき、昔からの悲願であるアメリカ勤務が実現することになり、妻はとても喜んでいました。

妻がアメリカに転勤、しかも4年間という比較的長期間。そして私は今アメリカにいる…複雑なシチュエーションになってきました。

近年(2013年の時点)、女性活用推進だとか言われていますが、妻の会社は女性が少ないのです。海外に研修生として派遣される女性社員は増えてきたものの、出向者として海外に行く女性は数えるほどしかいないのだとか。特に、子持ちで出向者に選ばれた女性は会社設立以来、初めてのケースだそうです。妻は数段とばしで女性活用の筆頭に立った感があります。

夫(私)がすでに海外に行っているので、子どもをおいて単身で海外に、という訳にも行かず、必然的に子連れ海外赴任です。

これまで、海外勤務者(男性)が妻子を同伴して海外転勤した場合、子どもの幼稚園や小学校の費用を会社が部分的に補填する制度はあったようです。でも、海外勤務者(女性・子持ち)が子どもを保育園に預ける場合の金銭補填の制度は無かったようで、妻の事例をもとに、新しく制度がつくられるという、まさに、会社始まって以来の大変革です。

こちらは住友商事の女性の事例。
http://dot.asahi.com/aera/2015011400082.html
海外駐在員の多い商社で、ようやく数名出ているレベルのケースです。

子連れで海外に赴任するために妻がやったこと

子連れで4年も海外に行くとなると、いろいろとやるべきことが出てきます。

・住んでいる家を引き払う(幸い借家だった)
・家具をアメリカに送るか処分する (全部の家具は送れない)
・アメリカ行きの荷造り(食料は手荷物でしか持っていけない)
・息子の通う保育園を退園し、アメリカで保育園を探す
・アメリカでの生活を(子連れで)立ち上げる
・国外在住となるための諸手続き

…1個1個のタスクが重すぎるのに、妻はたった3ヶ月で、働きながら、子連れで、夫の助け無しでやらなければなりませんでした。忙しいというレベルではなかったことでしょう。

おまけに、夏季休暇を長めにとってアメリカに住んでいる私に会いにくる計画も立てていたので、準備にかける時間が短くなるという制約までつきました。海外赴任の話が出る前から、妻子はアメリカに来る計画を立てていて、チケットもとっていたんです。

妻は毎日子育てをしながら、仕事もしながら、これをやり遂げました。そして、2013年の秋に、妻は子連れでアメリカにやってきたのです。

続きはこちらの記事です