この記事では、我が家がかつて経験した、妻の海外勤務にともなう別居について書いています。育児を理由に休職したい、ということで、総務と上司との三者面談を行うことになりました。
妻が海外勤務になり、日本に暮らす私と別居して7ヶ月。これを打開すべく、上司についに休職を申し入れ、人事面談が設定されたことまでを前回の記事に書きました。いよいよ人事との面談が行われました。
人事との面談に向けて、色々考えてきたけど、面談開始1分で覆る
上司は「お前の人生なのだから止めない」という考えの方だったので、休職に向けては人事との面談をクリアすれば休職が認可されるようでした。
人事部門は、私を海外に送り出してくれたりした恩義ある部門なので、面談の場では、休職中も有意義な時間を過ごして、復職後も会社のために働きます、という意思を表明する場だと理解していました。
私の休職理由は子どもと過ごしたい、というもので育休に近いのだけれど、子どもは保育園に通わせることができるので、休職中も家事育児に専念するわけではありません。
正攻法で行くと、休職中に大学に通ったりMBAを取得して、復職後も新しいスキルを使って働きます、とかいうのでしょう。ただ、MBAのコストを調べたところ、軽く年収を上回る様子。また、MBAを取得することが現在の仕事に直結するとも思えなかったし、それは除外しました。それよりも、何でも良いからアメリカで働いて、経験を積むほうがポジティブに感じました。それでダメだったら改めてMBAや学位とかを考えよう、と決意しました。
人事との面談は、人事のマネージャーと担当一人、そして私の上司と私の4人で行われました。
人事のマネージャーは開口一番、「で、休職してどうするの?兼業禁止の会社規則に基づき、休職中はもちろん仕事できないからね」と先制パンチに相当する一言を伝えました。
硬軟織り交ぜた人事との面談で、全くうまく喋れなかった
会社の規則をしっかり調べていなかった自分を呪いつつ、とっさにどう軌道修正すべきか考えました。血の気が引いていくのを感じました。
しかし、追い討ちをかけるように、人事は続けました。「会社を何年も休んで、その間に同期はどんどん成長していく。それに追いつくのなんて無理なんじゃないか?どうするつもりなんだ?」
色々シミュレートしていたボツネタが頭をよぎります。「そもそも、休職中に働けないという制約があるのに、休職中の自己啓発をどうやるか問うなんてナンセンスじゃないか」とも思いました。でもそれは言わずに、自分のやっている仕事はコンサル的な仕事で、技術や人や部署が変わっても通用する普遍的なものなのだから、3年ブランクが開いてもそれは問題ないと信じている、と伝えました。
人事は「そんなわけないじゃん。ブランクはできるし、人と差はつくよ」と一蹴。
同じ理由で日産を退職された堀込泰三さんの著書にも記載があったけれど、こういうとき会社の人は「同期との差が開く」という年功序列的な考えに基づき説得するんだな、と思いました。
私は、年次に応じた出世方式はあまり好きでなくて、実力と出世欲のある人はどんどん出世させて高給を与え、そこそこを望む人は低い給与に抑えるような、多様化した就労体系があればいいと思っています。だから同期と差が開こうがそれはそれでいいじゃん、40歳で課長になれなくてもいいじゃん、という思想なのだけど、そんな自説を説く雰囲気ではありませんでした。
人事は比較的高圧的に「(君の主張した)3年間のブランクで何をするのか、ビジョンが見えないよ」と迫ります。「今あるスキルをさらに伸ばすべく勉強して復職に備える」というプランを具体的に喋れば良いんでしょうが、なんとなく「MBAを取るべく頑張ります!」というのは違う気がしたので、私は「では、退職を検討します」と言ってしまいました。
正直、そんなに辞めたいわけじゃなかった。
退職に対する引き留めは、案外あっけなかった
「退職を検討します」という私の発言に、人事の担当者は若干動揺したようで、「おお、そこまでしなくても…」というリアクションでした。
とはいえ、人事が他にどういう答えを予期していたのか、今でもわかりません。「やっぱり休職なんて浅はかでした、今まで通り働きます」なんて期待してたのでしょうか。
少なくとも「君が辞めたら困る、どうかお願いだから会社に残ってくれ!」という事にはなりませんでした。少しだけ期待してはいたものの、残念ながら、私は会社が手放したくない人材ではなかったようです。
ひとまず、もう一度休職に伴うデメリットなどを家族としっかり話し合った上で、再度結論を出してください、ということで、その場はお開きになりました。
これが10月下旬のこと。11月の文化の日の連休を使って再び家族に会いに渡米することになっていたので、そのときに妻と直接話し合うことにしました。
息子のハロウィンの写真で退職を決意する
あまり芳しくない結果に終わった人事との面談結果をメールで妻に報告すると、妻は慰めの言葉をかけてくれました。
ちょうど、10月末で、アメリカではハロウィンの季節です。前年は何もしなかったけれど、今年は妻はやる気を出して、古着屋で4歳の息子のためにゾウの着ぐるみを買っていました。息子が仮装している写真を送ってくれました。ゾウの着ぐるみを着て微笑む息子のなんと可愛らしいこと…。
その写真で私は脱力しました。こんなに可愛い息子と離れて自分は一体何をやっているんだろう、いくら仕事や自分のキャリアが大事だからといって、こんなに可愛い息子の姿を写真でしか見られないなんて、絶対おかしい、と思いました。
すべての悩みは吹っ切れました。妻と話し合うまでもありません。退職を決断しました。とはいえ、妻と話さずに会社に伝えるのも良くないので、短いアメリカ訪問中に妻と会話し、帰国後に結論を上司と人事に伝えることにしました。